老いていく父親(1)

父親と同居を始めて3年が経った。
同居を始める前から、父親は「買い物症候群」に陥っていた。
20年前に母親がパーキンソン病を発症してから、財布を握っておりお金が自由になっていたことも要因だと思うが、買い物に異常な執着を持つようになった。
日に4、5回スーパーやコンビニに出かける。魚・肉・総菜・乳製品・パン・菓子・果物等々、食べ物なら何でもあり。
必要なものを必要な量だけ買う分には何度出かけても害はない。ところが買ってくるものは家族の人数を度返しした量である。しかも致命的なのは一度買ったものを覚えておらず、同じものをまた調達してくるのである。
<買ったものを冷蔵庫に入れる>ことで満足を得るわけで、別に積極的に食するわけではない。冷蔵庫は溢れ、果ては刺身やアイスクリームを夏の暑い盛りに座敷に置きっぱなしという状態になった。
食べものだけではない。暇ですることがないから一日中テレビを見ている。テレフォンショッピングにはまり、鍋・包丁・掃除機・ミニコンポから果てはアダルトビデオまで買いまくっていた。
同居前に近くに住んでいる姉から頻繁に電話がかかり、気が狂いそうだと泣きを入れられ、妻と別居中という自由な身のため同居するはめになった。
母親のためにという思いが強かったが、寸前に病状が悪化し入院→寝たきりとなってしまった。以来最悪の同居者と一つ屋根の下で暮らしている。